経営者にとって資金繰りの問題は常に考えておかなければならない重要な課題です。

事業運営において資金は血流と同じですから、自社の活動において資金ショートが生じることのないよう、日ごろから気を配っておかなければいけません。

事業資金の確保において、経営者であれば「助成金」「補助金」といったワードを見聞きすることがあると思います。

これらは銀行の融資などと違い、公的な資金の交付を受けられるものです。

公的資金という性質は同じでも、助成金と補助金は細部における違いが色々とあります。

本章では助成金と補助金の違いについて解説しますので、ぜひ参考になさってください。

最初に、助成金と補助金についてのアウトラインを掴み、その後で細部の違いに言及します。

助成金とは?

助成金とは?

まずは助成金とはどういうものか、概要を捉えていきます。

助成金は主に厚生労働省が所管する助成事業で、雇用の安定等を目的に事業主に支給される公的な資金です。

従業員の福祉を向上させるなど、厚生労働省が進める施策に見合った運営を行うことで支給要件を満たせば助成金を受け取ることができます

ただし、必ずしも助成金=厚生労働省とはならないのが分かりづらいところで、何らかのルールで「助成金」の名称が同省の独占使用となっているわけではありません。

自治体が行う施策にも「助成金」の名称が付いたものがあり、こちらはその自治体が進める施策に見合った事業に対して交付されます。

ここではざっくりと助成金=厚生労働省または自治体が運営する事業と捉えて頂ければ結構です。

補助金とは?

補助金とは?

助成金が主に厚生労働省の所管であるのに対し、補助金は主に経済産業省が所管するものです。

経営者にとってはお商売を考えるうえで経済産業省の方が関わりが深いかもしれません。

厚生労働省はどちらかというと労働者保護=経済活動を停滞させる印象があるのに対し、経済活性を優先する経済産業省は経営者の目線を良く理解しています。

補助金も経済活性につながる事業運営に対して交付される性質があり、国が進める施策と合致する事業運営に対して交付されます。

あくまで国が考える政策に合致する必要がありますが、補助金をもらえれば経営を加速させるブースターのような効果が期待できます。

ただ、こちらも必ずしも補助金=経済産業省とは限らず、一部の自治体が行う事業で「補助金」名目のものが存在します。

ここではざっくりと補助金=経済産業省または一部自治体が行う事業と捉えて頂いて構いません。

自治体が行う施策についてはバラバラで画一的でないため各施策を独自に解釈していかなければならないので、本章では厚生労働省が行う助成金事業と経済産業省が行う補助金事業について両者の違いを見ていきます

財源の違い

財源の違い

助成金と補助金はどちらも公的な資金であることは同じですが、財源に関しては出所に違いがあります。

厚生労働省所管の助成金財源は雇用保険料です。

雇用保険は労働者の失業手当として支払われるほか、労働者のスキル向上職業訓練にかかる費用などとして利用され、保険料は労働者と会社が共同で納めることになっています。

一方経済産業省が扱う補助金の財源は税金です。

ビジネスは国全体の経済を回すために必要で、その恩恵は国民全員が受けています。

そのため広く国民から徴収した税金が財源として使われます。

支給要件の違い

支給要件の違い

助成金と補助金では扱う省庁が異なり事業目的に違いがあるので、支給要件にも当然違いが出てきます。

助成金は雇用の安定や労働者の福祉などを目的にし、雇用保険の保険料が財源であることから、会社が雇用保険の適用事業者であり雇用保険料を支払っていることが必要です。

また法律上義務付けられた労務管理を行っていることや、就業規則や賃金台帳など作成保管を義務付けられている帳簿類を不備のないように管理していることが求められます

その上で、個別の助成金が定める支給要件を満たさなければいけません。

一方補助金の方は個別の名目ごとに趣旨が異なるため、要件を満たすかどうかは個別具体的に細かい精査が必要です。

助成金が大きく雇用の安定を目的にするのに対し、補助金は経済活性が大きな目的ですので、国力増進につながる取り組みを見せる事業者が受給できる仕組みになっています。

受付期間の違い

受付期間の違い

経済産業省が扱う補助金は、基本的に募集期間や応募期間が限定されます。

補助金の施策自体がそれぞれ単発で打ち上げられるイメージで、「今年は〇〇関連の事業者向けに△△という名前の補助金を打ち出そう」ということで単発的に設置されます。

そのため利用する側としては、いつどんな補助金が打ち出されるのか、アンテナを張っておく必要があります。

経営者としては本業に専念したいため、経営コンサルタントや税理士など普段付き合いのある専門家から情報取集をすることが多いようです。

一方、厚生労働省が扱う助成金は基本的に募集期間や受付期間が限定されないものが多いです。

中には期間限定となるものもありますが、基本は恒常的に受付可能なものが多いので、応募する側としては気が楽です。

気が向いた時に厚生労働省が行っている助成金を調べて、要件を満たせそうであれば応募するといった余裕を持った申し込みができます。

積極的に助成金を利用したい経営者は、労務管理に明るい社会保険労務士から情報収集をする人も多いようです。

採択率の違い

採択率の違い

厚生労働省が扱う助成金は、基本的に要件を満たせば必ず受給することができます。

単発で創設される補助金の方は枠が決まっているものがほとんどで、基本的には早い者勝ちになります。

先着〇社まで、あるいは財源が1億円の補助金であればその財源が尽きるまでは採択が可能ですが、財源がなくなれば要件を満たしていても応募を受け付けてくれません

助成金と補助金の共通点

助成金と補助金の共通点

ここでは助成金と補助金に共通する点を押さえます。

まず、両者は基本的にどちらも後払いで交付を受けることになります。

個別の施策によって、新規創業の際の初期段階で受け取れるものもありますが、基本的には助成金も補助金も、施策の目的に沿う事業運営をしたことや整備、体制を整えた後で、それを証明することによって受給することになります。

例えば従業員のスキル向上のため研修システムを充実させました、国が好むモノづくり事業の経営実績を積み重ねました、という事実を証明する資料を添付して応募し、これが認められればお金が入るという流れです。

新規創業時の銀行融資と違って、先行投資としての資金調達は期待できないことに留意しましょう。

もう一つの共通点は返済の義務がないということです。

政策金融公庫などが行う融資は借金ですので返済が必要ですが、助成金や補助金は借り入れではないので返済義務は生じません

この点については事業者として嬉しいところですね。

まとめ

まとめ

この回では資金調達方法の一種として、助成金と補助金の違いに焦点を当てて見てきました。

返済義務の生じない資金調達ということで、可能であれば利用したいものですが、後払いとなるため先行投資としての利用ができない点に留意が必要です。

実際に利用するには、個別の施策要件に自社が合致しているか詳細な確認と応募資料の準備も必要です。

時間と手間がかかり社内のリソースを割かなければならないため、迅速性が求められるシーンでの機動的な資金調達は不可能です。

急ぎの資金需要には迅速性、確実性で秀でる当社のファクタリングをぜひご検討くださいませ。