かつて日本の労働社会では、「終身雇用」という考え方がありました。労働者は一度就職した会社で定年までの長い時間を過ごし、ひとつの職場と本業に人生を捧げる働き方が当たり前だったのです。また、企業側も終身雇用を前提として従業員を雇い、生涯を保障する役割を担っていました。

しかしそれも昔の話。

現代では、労働者はスキルやキャリアのアップを目指す柔軟な考え方のもとで転職を繰り返すようになったほか、企業側も無理に引き止めるようなことは控え、従業員の意思を尊重するなど、互いを縛り付け合うことのない「自由」な働き方が推進されるようになっています。

そうした中、最近注目を集める働き方が「本業」と「副業」の両立です。

新たなチャレンジを求めて従業員が職場を転々とするような自由な働き方が定着したとはいえ、これまでは「本業」を一本に絞った働き方こそが道理とされていたことにより、「副業」は禁止される風潮がありました。

企業が副業を禁止してきた理由には、「本業に対する意欲低下防止」や「機密事項の漏洩防止」など様々です。特に正社員などの正規雇用者に対しては、副業を固く禁じる傾向があり、企業によっては副業が発覚すれば罰則を与えるという規約を設けていたほどです。

しかし、政府が主導する「働き方改革」にて労働者の働き方の多様性を求めた上で副業を推進するガイドラインがまとめられたことや、新型コロナウイルスの感染拡大によって収入が減少した従業員への対応として、副業を解禁する企業が増加傾向にあります。

では、副業とは具体的にどのような働き方なのか。また、副業を解禁することにより、企業と従業員の双方はどのような影響や恩恵を受けることになるのでしょうか。順を追って解説していきます。

副業とは

副業とは

副業とは、本業として特定の企業や団体に在籍(主に正社員)しながらも、本業以外から収入を得るために行う仕事のことです。副業を明確に定めた法律は存在しないため、他の職場での勤務でも自宅で行う仕事であっても、本業とは別の手段で収入を得ていれば、現状ではそれらはすべて副業とみなされます。

副業の種類

副業の種類

上述した通り、本業以外の仕事はすべて副業といえます。ですから、たとえば会社で勤務したのちに居酒屋やレストランなどでアルバイトをすれば、それが副業です。

また、最近では自宅でインターネットを活用して行う副業も人気が高まっています。

ネット上で企業や個人がライティングやデザイン制作といったクリエイティブな仕事を発注し、それらを受注することで収入を得られるクラウドソーソングの利用がそのひとつ。

そのほかにも、ハンドメイドの作品をフリマアプリや自作のショッピングサイトで販売したり、動画配信サービスでオリジナルの動画投稿やLIVE実況を行うことで広告収入や視聴者からのカンパを得るといった気軽に始められるような行為でも、収入を得られるのであれば副業となります。

このように副業は、多種多様な選択肢の中から自身の興味やスキルに応じて選ぶことができるため、本業を持つ従業員にとっては、毎月の収入がアップするだけでなく、本業では得られないような体験や、新たなチャレンジにもつながるのです。

副業に関する基本的なルール

副業に関する基本的なルール

従業員が副業を開始するためには、基本的には本業の職場と従業員双方の合意が原則となります。したがって、副業を希望する場合は職場への申告と承認が必要になる場合がほとんどです。

ただ、本業の職場が副業を禁止する規定を定めている場合は、従業員が副業を開始することはできませんし、もしも無断で副業を始めていることが発覚すれば、何らかの罰則を受ける可能性もあります。

また、仮に副業を容認している企業や団体であっても、機密事項の流出や引き抜き行為の防止の観点から、同業他社での副業は禁じていたり、風俗業や反社会的な仕事など、コンプライアンスに抵触するような特定の仕事は副業として認められないといった各々のルールを設定している場合があります。

副業解禁によって得られる影響と恩恵

副業解禁によって得られる影響と恩恵

では、企業や団体が副業を解禁し、実際に従業員が副業を始めることによって、双方にはどのような影響や恩恵が得られるのでしょうか。

企業や団体

・従業員のスキルアップや知識・経験の蓄積を見込める

従業員が副業を行うことで、本業では得られないスキルや知識・経験を得られれば、それらを自社の発展に活かせることも考えられます。事業の分野や業界にとらわれない空気が自社の業務や経営に吹き込めば、新たな可能性の発見につながることもあるでしょう。

・自由な社風としての評判が広がる

給与額などの諸々の待遇はもとより、働き方の多様性と、縛り付けのない自由な社風が求められる現代です。ですので、世の中に副業が容認される自由な社風の企業や団体だと知れ渡れば、多数の人材が入社を希望することにもつながるため、より魅力的な社員の確保も可能になります。

・優秀な人材の流出になりかねない

優秀な人材であればあるほど、より高いスキルやキャリアアップを求める傾向にあります。したがって、もしも従業員が副業で本業以上のやりがいや結果を得られれば、さらに高いレベルを求めて本業の職場を退職するという結果になることも予想されます。

・本業に対するやる気の低下と業績悪化の可能性

上記の内容にも関連する影響ですが、従業員が副業に精を出すことによって本業に対するやる気やモチベーションが低下する恐れがあります。やる気やモチベーションが下がれば、経営者や上司がどんなにハッパをかけても良い結果が生まれにくくなるもの。副業の積極的な推進が結果として組織全体の士気が下がり、業績の悪化を招く可能性も少なからずあると考えてよいでしょう。

従業員

・収入アップとストレスの緩和

従業員が副業を開始すれば、当然ながら収入のアップが見込めます。これにより、生活水準の上昇やプライベートの充実も期待できるほか、本業では得られない経験や刺激によって日常のストレスも緩和されることもあります。

・本業での収入を確保した上での新チャレンジ

本業の職場で副業が容認されれば、本業で得られる収入を確保しながら、自身が興味のある新たな仕事へのチャレンジもリスクなく行えるようになります。

・労働時間の増加による疲労の蓄積

副業を始めるということは、単純に労働時間が増加することにもなります。収入のアップや新たなチャレンジに取り組めるといっても、労働時間の増加によって疲れの蓄積が加速し、本業にも副業にも支障を与えるようなことになれば元も子もありません。

まとめ

まとめ

働き方の多様性を求める労働者の声や、それを後押しする政府の動き。そして昨今の新型コロナの感染拡大によって、本業と副業の両立は社会が求める新たな働き方として認知されるようになり、企業や団体も副業の解禁を推進する動きをみせています。

しかし、副業の導入によって企業や団体それに従業員の双方に恩恵がある一方で、大なり小なり悪影響を与える可能性もあることは確かです。

ですので、これから副業を導入しようと考えられるのであれば、副業に関するルールを明確化し、互いの悪影響を最小限に抑えるような対応が重要になります。